「ばらの騎士」号

ウィーン西駅 到着サイン
またもヨーロッパの特急列車のお話です。
今日はちょっとクラシック音楽ネタかもしれません。

ヨーロッパの国際特急(EC)やインターシティには
それぞれ列車ごとに固有の名称があると書いて来ました。
その中で最も多いのが多分、作曲家の名前だと思いますが
なかには作曲家ではなく、
作品名(曲名)が付けられた列車があります。

かつてのヨーロッパ横断特急(TEE)の
「ラインゴールド」や「パルシファル」は有名です。

現在も姿を変えて残っているものの一つに
「ばらの騎士 Der Rosenkavalier」の名が付けられた
EC61 ROSENKAVALIER です。


ミュンヘンに生まれた交響詩やオペラで有名な作曲家
リヒャルト・シュトラウスの華麗なオペラのタイトルですが
18世紀のウィーンを舞台にしたこの作品にちなんで
この列車はミュンヘンとウィーンを結んでいます。
私が乗った時のEC61ばらの騎士は、
ミュンヘンを7時25分に出て、ウィーンに12時5分に到着しました。
その後、93年にはその時刻にミュンヘンを出るのは
クラーゲンフルト行きのEC191フーゴー・ホフマンスタール
(オーストリアの作家の名。かつてはEC111)になりましたが、
現在、7時26分発のウィーン行き、
ばらの騎士が復活しているそうです。

笑えるのが、取って変わったのがホフマンスタールという所です。
この作家はオペラ「ばらの騎士」の台本作者さんですね(笑)。

上の写真は列車ではありませんが、私が乗った時の
ウィーン西駅での到着案内の表示です。
10番線12時05分、 EC61ばらの騎士
ミュンヘンから 10分遅れ
と書かれています。

ウィーン西駅
ウィーン西駅はドイツ・フランス方面からの
国際列車が到着する、ウィーンのメイン駅ですが
こんな感じでいまいち場末な感じ…(笑)いや、場末ですが。

.
この「ばらの騎士号」という列車名は、
音楽の本やCDのブックレットにもよく出ています。
ただし、今のECではなく、このオペラの初演時の事です。

オペラはドイツのドレスデンで初演され、
たちまち大好評を博します。
ウィーンから大勢の人がこれを見ようと駆け付け、
このオペラを見る為の特別列車「ばらの騎士号」が
ウィーン〜ドレスデン間で運転されました。

.

.

以下、音楽話。
長いのでお暇な方だけ。

学生の時、友人とザルツブルクからウィーンまで乗ったのが
このROSENKAVALIERでした。
「あ、ROSENKAVALIERってばらの騎士という意味なんだろうな」
と、なんとなくそう思って、列車のパンフを見ると
作曲者はリヒャルト・シュトラウスとありまして、
あの交響詩の人か! うわー、聴きたいなぁ! と思いました。

その少し後94年の3月、ウィーン国立歌劇場で
シュトラウスの作品がいくつか上演される日程があったので
ぜひ「ばら」を見たい(他の作品も)、と旅立ちました。
オペラ好きの方ならここでピーンと来られたかもしれません。

日程が決まらなかったので、予約もしておらず、
何も知らない私は、現地でチケットを探したのですが
どこに行っても「ばら…」と言うだけで首を振られます。
今迄、現地でチケットが手に入らなかった事はないですし、
久しぶりの「ばら」だからな〜。みんな「ばら」が好きなんだな。
なんて思っていました(笑)。

ま、今夜立ち見で行くか。
と、朝に観光に出かけようとして、歌劇場の横を通った時、
なにやら行列ができているのを発見。
えええーーー!?

急遽、私は観光を中止して、友達と別れて1人並んでいたのですが、
整理券が配られ、一旦解散となりました。
午後に再度集合、整理券順に並んで、時々点呼を取るから
完全武装で来いと(笑)。

「君1人?」とイケメンの兄ちゃんに声をかけられ、
ナンパか?と思ったのですが、残念ながら(笑)そうではなく、
友人がまだ来ていないから、その整理券をあげるよ。
点呼始まったらもう友人は失格だろうから。
と、150番以上早い整理券を下さいましたーー!有り難や〜!

ようやく良い場所の250円の立ち見券が買えた後、
ぐるーっと劇場を回って入場させられた時、驚きの事実を初めて知りました。
「そういえば今日は誰が指揮して、誰が歌うんだ?」
今日のポスターの前を列が通過する時にちらっと見ると
「指揮 カルロス・クライバー」
……………!!!!!
くら、クライバー!?  これ、クライバーの「ばら」の列?
そりゃあチケットが手に入らなかったのも当然、
立ち見の行列が徹夜だったのも当然!

この日のチケットはプレミア価格で10万円以上だったそうで
日本からもこの公演(全部で三日、クライバーは振りました)を
見る為だけのツアーが企画されたそうです。
あー、日本人、多かった。

.
あんなに感動して興奮した舞台は最初で最後でした。
あれから何度も「ばら」を見ています。
この後、来日したクライバーとウィーンの「ばら」も見てます。
しかし、生まれて初めてみた「ばら」が
クライバーの、ウィーンの「ばら」だった人間の
悲劇をお分かりいただけるでしょうか。(もちろん幸運も)

あの時、二幕の終盤、指揮をしながら踊っていたクライバー、
カーテンコールで何度も叫ばれていた
「カルロース!」という熱狂の声、
足踏み、桟敷の板を叩く音、
あれを越える「ばら」にはきっと生涯出会えないでしょう。

もちろん、この時のビデオ(DVD)も買いました。
しかし、あの熱狂の空気は全然、入っていないんですよ。
むしろNHKで放映された、
オーストリア国営放送局の録画放送、
あれの方が興奮した観客のコールも入っています。

ばらの騎士チケット
使用しなかった方の整理券(水色)とその日の立ち見チケット、
そしてその日の出演者パンフ。
チケットには
“パルテッレ(平土間)立ち見139番 20シリング”
と書かれています。
当時、立ち見は15シリングと20シリングでした。

385番の整理券なら、もう間違いなく天井桟敷の立ち見でした。
兄ちゃん、ありがとうっっ!

出演者パンフにはしっかりとクライバーの名が。

.
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カテゴリー: ドイツ・オーストリア, 海外の鉄道 — 詠 11:23 PM  
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4 件のコメント »
  1. 早速反応してしまいました。(’▽’*)ニパッ♪

    ク、クライバーの、ば、ばらの騎士をウィーン国立歌劇場で聴いた~~~??!!!

    うらやましいです。
    嫉ましいです。
    憎たらしいです。(失礼!)
    いや、普段の行いが良いからきっとこんな経験をされることが出来たのでしょう。

    日本からも追っかけが、たくさん行っていたことでしょう。
    パルテッレの立ち見なら臨場感抜群だったので無いでしょうか。
    きっと立っていることを忘れてしまうぐらいの熱演だったのでは無いでしょうか!
    う、う、うらやましい!!!!!!!!

    ・・・それにしてもラッキー×∞の体験ですね!

    残念ながら私はクライバーを生で聴いたことがありません。
    CDでしか感じ取ることが出来ません。
    でもウェ―バーの魔弾の射手のCDはすーばらしいです。

    おっと、鉄道ブログのコメントで音楽を熱く語ってしまいました。
    大変失礼致しました。

    コメント by ポン・ション — 2009 年 2 月 21 日 11:53 PM
  2. 連続コメント失礼します。
    クライバーに興奮して支離滅裂なコメントしてしまいました。
    珈琲飲んだら落ち着きました。お許しください。
    「ばらの騎士号」があるんなら他にも面白列車名ありますか?
    オーストリア国鉄「ジュピター」号とか(モーツァルト)、
    ドイツ国鉄「田園」号とか「英雄」号(ベートーヴェン)とか、
    ロシア行き国際列車「悲愴」号とか(乗りたくない)、
    やっぱりオペラの名前が主流なのでしょうか?

    コメント by ポン・ション — 2009 年 2 月 22 日 1:25 AM
  3. ポン・ションさん、こんばんは!
    早速のコメントありがとうございます〜
    ホントにすごかったですよ、臨場感と言いますか、
    触れたら壊れそうに繊細な舞台と、
    終演後の興奮はすごかったです。
    歌手より誰よりも一番声援と花が多かったのが
    指揮者でした(笑)。
    私も自分のもたれている手すりの板を叩いて
    「カルローーース!」とやってました(笑)。

    自慢ついでにもう一つ。
    この2、3ヶ月ほど前にもウィーンに行った時、
    見たいオペレッタの裏だったので見なかったのですが
    歌劇場ではドミンゴの「ホフマン物語」をやっていました。

    で、この3月に行った時、オペラは
    シュトラウスばかりを見たのですが、
    その中の「ナクソスのアリアドネ」では
    ツェルビネッタという延々10分間、
    コロラトゥーラのソロを聴かせるオイシイ役があります。
    その前のドミンゴのホフマンでドタキャンの歌手の
    ピンチヒッターでオランピアを歌った新人が
    大成功したので、そのご褒美に
    この役を今回歌うんだという事でした。

    初めて聴いた”新人”ナタリー・デッセイ、
    もんのすごいブラボー!!が起こっていました。
    クライバーの「ばら」とデッセイのツェルビネッタ、
    一気に聴いちゃいました。

    >魔弾
    シュライヤーの人間離れした完璧なテノールが
    幻想的な話にとても似合っています。
    あの序曲からして一気に引き込まれるクライバー節は見事です。

    そうそう、曲名の列車はやはり「ばら」と
    「ラインの黄金」と「パルシファル」しか思い当たりません。

    コメント by 詠 — 2009 年 2 月 22 日 6:01 PM
  4. (’▽’*)ニパッ♪
    それは本当に貴重な体験ですっ!!
    私はオペラには疎いのですが、そんな体験したら一気にオペラ
    好きになると思います。
    ほんとにうらやましいです。(○`ε´○)

    生の演奏を聴く事は素晴らしいことですよね!!
    私は札幌交響楽団の定期会員で、毎月、定期演奏会をキタラ
    (札幌コンサートホール)で聴いているのですが、楽器から直接
    振動が伝わってくる感じ、歌なら歌手から直接つたわってくる
    感じ、一言でいえば「臨場感」がたまりません。

    嗚呼、クライバーとデッセイですか・・・。
    生ですか・・・。ウィーン国立歌劇場ですか・・・。
    ほんとにうらやましいです。(○`ε´○)

    魔弾の射手、序曲から一気に引き込まれる感じ、共感です!
    いや~クライバーはほんと凄いです。
    ベートーヴェンの7番もクライバーがお気に入りです。
    (これは定番ですね・・・)
    逆に6番はクライバーはちょっと・・・。(楽しすぎるから)
    田園はクールな感じがいいので、定番のカラヤンがいいです。

    ってこれ鉄道ブログでした・・・。汗)
    「みたいなもの」だから音楽を語ってもいいことにして下さい。
    失礼いたしました。

    コメント by ポン・ション — 2009 年 2 月 22 日 7:23 PM
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