君よ知るや南の国〜国境の駅4

ブレネロ

君よ知るや南の国 レモンの木は花咲き
くらき林の中に こがね色したる
柑子(こうじ)は枝もたわわに実り

様々な名訳のあるゲーテのミニヨンの歌の一節です。
これは森鴎外の訳ですが、
「君よ知るや南の国 樹々は実り花は咲ける」
という堀内啓三 恵贈 敬三さんの名訳も有名です。

ゲーテの「ヴィルヘルムマイスターの修行時代」に
登場する薄幸の少女ミニヨンは
トマのオペラ「ミニヨン」の題材にもなっていますが
彼女の歌うこの詩は、今も昔も
ドイツの人々の心を揺さぶるようです。

長く厳しい冬には暗く重い雲がたれ込める
ドイツの人々にとって南国とはイタリアの事でした。

中部ドイツのボンに生まれ、旧東ドイツの地域で活躍した
ゲーテは憧れのイタリアに行った時の事を元に
「イタリア紀行」を書き、
そしてこのヴィルヘルムマイスターでも書いています。

また、少年モーツァルトも当時音楽の本場と言われていた
ローマで一旗あげる(&求職の)為にイタリアに赴きました。

北方のネーデルランドの画家達も本場の絵画を学ぶ為
アルプスを越えてイタリアに向かいました。

彼等が同じく辿った道、それはかのブレンナー峠でした。


今もドイツやオーストリアの人は
ブレンナーという地名を口にする時、
ある種の思いを込めているような、そんな気がします。

私も初めてこの峠を越える時、
いろいろな思いが強く募って期待に震えたものです。

……でも、行ってしまえばこれだけの駅です(笑)。
実際のブレンナー峠を越える街道は
この駅からちょっと離れた大きな高速道路の下にあります。
前回のモダーヌが繋ぐ二つの地域が元々同じ国だったように
このブレンナー峠の南北も20世紀初頭迄は同じ国でした。
ハプスブルク帝国(オーストリア帝国)のチロルという地域です。
現在、この峠で区切られた北半分がオーストリアのチロル州、
南半分がイタリアのトレンティーノ=アルト・アディジェ
特別自治州(南チロルと外国のチロル)に属しています。

第一次大戦に敗北して、衰弱したオーストリアから
かすめ取った…と言っては言い過ぎでしょうが。

.
ブレネロ 国境
ブレネロ/ブレンナー駅は一応イタリアに属すようですが、
本当に国境の駅で、構内に国境があります。
上の写真の貨車の上方、光ってしまっていますが
国境がお判りでしょうか。
プレートが2枚掲げられていて、
国旗、そしてイタリア、オーストリアと書かれています。

ブレネロ駅ホーム
駅名はまずイタリア語で「ブレネロ」
次にドイツ語で「ブレンナー」と表示されています。
写真ではたまたまですが、右にオーストリアの車両
左にイタリアの車両(優等列車タイプ)が停まっています。

ここで機関車の付け替えをする事もありますし、
国際特急でも10分程の停車をします。

.

数年前に買ったゲーテの翻訳では
「あなたは知っていますか レモンが実り花咲く国を」
のようになっていて、がっかりしました。
やはり古くさくとも「君よ知るや南の国」であって欲しいですね〜
「いっしょに行きましょうよ愛する人よ」では深味がアリマセン。

.
さて、モーツァルト少年はイタリアで、レモンやオレンジではなく
初めて見る果物スイカにハマり、毎日食べ続けていたそうです。

私はかつてオーストリアからイタリアへの列車で、
ブレンナーの次で降りて山歩きを楽しむという
隣のコンパートメントに乗り合わせた老夫妻と仲良くなり
別れ際には
「太陽を楽しんで来てね!」と言われた事があります。
やはり今も北の人にとってイタリアは南国なんですね。

…ついでに言うなら、ブレンナーで車掌交代して
新しく乗り込んで来た車掌が口にガムを投げ入れたのを見て
車内のオーストリア人達は「イタリアーノ!」と言っていました。
同じチロルでも今や国民性は違っているようです(笑)。
次の日に見たイタリアの車掌さんも列車のコンパートメントに
新聞がある所を見つけて、座って読んでいました。
おおらかだなぁ。

実はそんな所も憧れなのかもしれません。

.
ともに行かまし
あはれ 愛しき人よ!

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カテゴリー: イタリア, ドイツ・オーストリア, 海外の鉄道 — 詠 11:19 PM  
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6 件のコメント »
  1. すこしは欧州史のお勉強もしなければなりませぬな・・・。
    (※泥酔状態です。すみません。)
    ブレンナー峠・・・ありました!(世界地図を見てる)
    1375m!アルプス中央の険しい峠でございますな。
    ハプスブルク帝国の領土をかすめとるなんて言語道断!
    北方領土を返せ!といいたい気持ちと同じでございます。
    おっとモーツァルトがスイカにはまってたのは初耳でございます
    やはりお嬢様の知識は深いですなぁ。
    ドイツ圏の人々にとってブレンナーは特別な峠なのですね。
    私はメンデルスゾーンのイタリアを聴きたくなりました。
    それではおやすみなさい(lll __ __)バタッ 

    コメント by ポン・ション — 2009 年 4 月 24 日 12:56 AM
  2. 追記:↑文章変ですね。まったく、酔っ払いはダメですね~。
       私が欧州史の勉強をしなきゃというつもりで書いたのです
       欧文学の勉強もせねば・・・。
       「君よ知るや南の国 樹々は実り花は咲ける ・・・」
       素敵な言葉ですね♪

    コメント by ポン・ション — 2009 年 4 月 24 日 10:18 PM
  3. ポン・ションさん、こんばんは〜
    確か、モーツァルト関連の本に、スイカにハマった
    モーツァルト少年の話があったと思うのです(笑)。
    ホンット、どうでもいいトリビアです。
    ブレンナーというと、小塩節さんの
    「ブレンナー峠を越えて」という本のタイトルが
    いつも頭に浮かぶのですが、芸術のお話だったと思います。
    何か、特別な峠なんだな、というのは確かなようです。

    コメント by 詠 — 2009 年 4 月 24 日 10:49 PM
  4. 堀内啓三? 知らんな。

    堀内敬三とちゃうか。

    それにしても、インターネットに誤った表記が、山とある。揃いも揃って、調べもせずに、書いとるんだな。噫。

    コメント by 来光堂 — 2012 年 7 月 15 日 8:58 PM
  5. 来光堂さん、
    ご指摘ありがとうございます。
    調べずに…というより誤変換ですね。
    私に限らずネットでの間違い…というのは変換ミスではないでしょうか。
    会社のPCはいつも「ごせつめい」と打つと「後説明」となります(笑)。
    一気に書いているので打ち間違い、脱字、変換ミス多いです。
    まぁ、日記ブログの楽ちんスタンスなので、
    校正等していないということでご容赦を。

    何事もロクに調べずに書きなぐっているので、
    いつもご指摘受けています。調べてから書くと、
    きちんとしたサイトを作らねばならなくなりそうで、
    私には無理そうです。
    時々、稀にお仕事の依頼もありますがここがネックです。
    いつもテキトー、浮かんだもの、なので。

    外国語の事もいつも「確かこんなだっけ」
    程度で書いていますので、きちんと語学が出来る方が
    ご覧になればイライラされているかと思います。

    お時間ありましたら、記事内容も正誤をチェック頂き、
    修正して頂けると私もラクできます(笑)。
    特に鉄道ネタの裏付け、お願い致します。

    コメント by 詠 — 2012 年 7 月 15 日 10:18 PM
  6. 通りがかりに

    ●ttp://www.geocities.co.jp/SweetHome-Ivory/1456/geobook.html
    >>来光堂 - 04/02/11 22:39:35
    >>
    >>朝の訪問 の記事中、  × 鈴木大雪  ○ 鈴木大拙 です。

    ●ttp://6117.teacup.com/flatpics/bbs
    >>来光堂 †投稿日:2009年 6月16日(火)16時55分28秒
    >>
    >>1961年のところで、◊三浦洗一  ○三浦洸一だったような記憶が…。

    ●ttp://www.audio-visual-trivia.com/2005/02/never_on_sunday_pote_tin_kyria.html
    >>来光堂 | April 10, 2012 11:19 AM |
    >>
    >>「※日本では1990年に”日曜はダメよ”のテーマ曲が佐藤浩一が(略)」
    >>→〇「~佐藤浩市」

    誤字探し生き甲斐の池沼シジイ
    東京に長く住んでギスギスしたのか。

    コメント by 鰻 — 2012 年 7 月 16 日 10:52 PM
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